まきおの『こんな人生だからこそ』

第34章 「冤罪」

はじめに

 幸か不幸か、善悪は別として私には多くの経験がある。
 その多くの経験が有るからこそ今の私が在る事は間違いない。(当然)
 しかしながら、いくら多くの経験をしているからとは言え、それが正しい方向性を持って自分の人生に必ずしも活用されるとは限らない。いや、むしろ私の幼い頃の様な経験をした子供の 殆どは、社会に上手く順応できずに社会から弾き出されてしまう。

 そんな子供たちが、立派な社会人として成長することは、正直、自分の経験を振り返ってみても決して容易な事ではない。

 そもそも、この「立派な社会人として・・・」という言葉さえ私は疑問に思えている。
 今のこの時代、何を持って立派な社会人と言うのか!?
 何を基準として「立派な大人と言うのか!?」が、・・・

 そんな事を私がどう思おうと、「それはあんたの勝手!」と言われてしまえばそれまでだが、しかし、施設で育つ子供たちは「社会に出たら、社会は厳しいです!それに負けずに立派な大人になりなさい!」と教えられるが、その、「それに負けずに」とは?いったい何を指しているのか?その頃の私には真意が分からなかったが、それは今でも、???

 が、どんな子も皆、親をはじめ、大人の姿を、大人の背中を見て育つものです。
 親に限らず、私達、大人の背中を見て・・・。

 また、時には、どんなに人格的に素晴らしい親を持った子でも、ごく一部の悪い大人達の餌食となって巻き込まれてしまうことだってあるのです。そんな子が裁かれるのを見ると、そんな子供達を利用して肥やそうとするごく一部の悪どい大人達にむしょうに腹が立って仕方ありませんが、今の私の胸の内をこれ以上書き続けると、私一人の事では済まされないので止めますが、自分だけが肥やしたい為だけに、さも、もっともらしい事を語り、罪悪感の一かけらも無く平気な顔をして人を騙してのさばっているそんなごく一部の大人がもし自分の傍にいたなら・・・。何を失おうとも、罪悪感は失って貰いたくない。それと、勇気だけは・・・。

 私自身の経験を基にして書いている、この「まきおのこんな人生だからこそ」が、少しでも多くの、昔は子供であった大人の方々にも、少しでもお役にたてばと思い今回も書き綴ります。

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汽車で岩見沢へ

 今回掲載する経験に登場する人物は、何章かで時々出てきている「○○○はし」君との記憶。なんでそうなったのか?

 ある日、私は彼にくっ付いて岩見沢に行きました。それも汽車で・・・。
 岩見沢に着くと、駅前から見渡した景色は幼い頃に見た景色と何処か似ている感じで、駅前は歩行者天国となっていて商店街が駅前に沿って沢山並んでいました。でも、私は岩見沢に行ったのはこの時が確かに初めてですが、ですが、どこか、この風景は幼い頃に見たような?・・・。

 「いつ見たんだったかな〜?」
 「どこだったかなぁ〜?」
 「まさか小さい頃に来た憶えがあるのは、ここじゃないだろうなぁ〜・・・。」

と、そんな微かな記憶を必死に呼び起こそうとしながら、迷子にならないようにと彼の後ろにくっついて駅前の商店街をブラリブラリとただ歩いているばかりでした。

 彼が何のために私を誘って岩見沢に行ったのか?その理由はまったく憶えていませんが、私もノコノコと付いて行ったからには、それなりの何か理由があったか、よっぽど暇で、誰も友達がいなかったからなのか?まぁ、おそらく後者の方でしょうね。

 そうして商店街をブラブラした後、彼は何が目的だったのか?建物のビル名は憶えていませんが、岩見沢駅を背にして立った左に数階建てのショッピングデパートが在り、そのデパートの中へと入って行きました。

 そのデパートに入ると、彼はエレベータもエスカレータも使わず、階段を使って上に登り始めたのです。
 「あれ?なんで階段なん!?」って思った記憶がありますが、その理由も聞かずにただ彼の後を付いて行きました。

 そうして最上階まで上がってゆくと屋上では何やらイベントをやっていて、何かのキャラクターなのか、ぬいぐるみを着ている数人がアトラクションをしていました。が、どちらかと言うと幼児向けのアトラクションの様で私はまったく興味を持ちませんでしたが、私には、彼もそんな様な感じだったと思いますが、彼には何か理由があったのかなぁ〜?そのアトラクションをず〜っと観ている訳でもなく、また、誰かと待ち合わせをしている感じでもなく、アトラクション会場となってるその場所をぐる〜っと1周したと思ったら直ぐにデパートの中へと戻って行きましたからね・・・。何だったんでしょう?・・・

 彼のその時の行動を今でも疑問に思っていますが、そもそも彼にくっ付いて岩見沢に行った自分でさえ疑問ですし、その後起きた事さえ、私には全てが疑問で、「あなたの知らない世界」みたいな様なものでしたからね〜・・・。

 この時の事は本当に、何で自分は彼にくっ付いて汽車に乗ってまで岩見沢まで行ったのか?が、その理由を憶えていないことが残念ですが、それも無理のない話で、彼は自分の目的を果たせないで終わってしまいましたからね〜・・・それだから私も彼のその理由を知らないで当たり前と言えば当たり前かもしれません。

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階段の踊り場で・・・

 そうして私は理由も知らず、ただ々彼の後ろにくっついて屋上から下へと階段を下りはじめました。

 そうして階段を下ると、3階か4階の何れかだったと思います。彼は私に、「ココでちょっと待っててくれ!俺、ちょっと行ってくるから。」と、突然言い出したのですが、とは言われても、正直私は、「彼は私をココに放って置いて、自分だけ何処かに行ってしまうんじゃないか!?」と想ったのが正直なところで、彼にはそんな「自分勝手」な処がありましたから、このまま待っていても待ちぼうけをくらい、「こいつ!迎えに来ないでそのまま何処かへ行ってしまうんじゃないか!?」と思いましたね〜・・・。今一、彼は信頼が置ける仲間ではありませんでしたからね〜。過去の彼がした事から考えれば・・・。

 それ以後の彼とのやり取りは殆ど記憶にはありませんが、結局私は、3階だったか4階だったか、そのどちらか何れかの踊り場で彼が戻ってくるのを待つはめになってしまいました。

 それからどれだけ待っていたでしょうか?かなり待っていましたよ。私もすっかりシビレを切らしていましたから。それも、「あの野郎!俺をぶん投げて何処かにズラしたんじゃないか!?」と怒りがこみ上げはじめていましたからね〜。「あの野郎!!」って・・・。

 でも、だからと言って待ち疲れたと言って汽車に乗って札幌に戻る事も出来ず、また、腹が空いたからと何かを買って食べる事も出来ない状態、「無銭状態」でした。

 岩見沢までの汽車代は彼が出してくれましたし、彼は、この何だかわからない岩見沢行きに関してのお金は「すべて自分が持つから付いてきてくれ」と言われてついて行っただけですから、1円のお金も持たずにと言うか、1円のお金も持っていなかったので帰るにも帰れない、何処に行くにも何を食べるにも、何にも出来ない状態で彼の戻りを待っているしかなかったのです。

 そうして待ちに待ってムカついていた時の事です、やっと彼は戻ってきました。
 が、彼は2人の見知らぬ男、大人と一緒に戻ってきました。
 そんな事などおかまいなく、戻ってきて顔を見るなり「この野郎!お前、何やってんのよー!!」と怒鳴ってやりました。
 ですが彼は一言も、何も言わないのです。その様子から、「あれ!?この男ども、なんか変!」と想った瞬間、私の体は反応しましたね。「ヤバイ!逃げよう!」と・・・。

 でもその体の反応を思い止めさせたのは、「うん?こいつら、もしかして補導員!?でも、俺は何にもしてないから捕まる理由は無いから逃げることないべや!」と思った瞬間から、「なんじゃー!なんか文句あんのか!?」みたいな感じでデーンと構えましたね。
 その時彼に思ったのが、「このやろう!何かして捕まったな!?」と、直感的に想いましたね。本能と言うか?臭いと言うか?同じ穴のムジナなだけに感じるんですよね〜敏感に・・・。

 案の定、彼は何かをやったみたいでした。その理由はその時もその後も聞く事はできませんでしたが、一人の男が私の左手を掴み、私に、「君もこいつの仲間か!?」と聞いてきました。
 「仲間か?と聞かれれば仲間だし、ただの友達と言えばただの友達だし、うぅ〜ん・・・」と、一瞬返答に困りました。と言うのも、彼は何かをやった事は感じましたから、ここで自分が、「仲間です」な〜んて事を言ったら、「何もしていない自分まで犯罪者にされる!」と言う事は分かっていましたから、「友達だけど仲間じゃない!」って答えたのです。

 そしたら男が、「仲間も友達も一緒だぁ!」って言って、私の左手を掴んで何処かに連れて行こうとするんで、「ちょっと待って下さい!俺、何にもしていませんから〜」と言ったのですが、男は彼に、「こいつも仲間なんだろう!?一緒にやったんだろ!?見張りだろ!?」と問い質したのですが、彼は「・・・」。

 結局、私も彼が何かをし、その仲間(同罪)だと言う事で、駅前の交番へと連れて行かれました。

 こんな事ってあります!?有りますか!・・・そうですよね。まして私の場合は彼を知らない者ではないし、真昼間に学生らしき年齢くらいのガキ2人がデパートに買い物に来てるなんてことは不自然ですよね。この日の曜日は日曜日じゃなかったからな〜・・・。

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共謀犯と思われ

 てなことで、私達2人は駅前の交番に連れて行かれて職務質問。とは言っても彼の場合は何か犯罪を犯して捕まっている。所謂、何かの犯罪の現行犯。そして私はと言うと、現行犯ではないが彼の犯罪の仲間と言う事になっているような空気。

 最初は2人並べられて椅子に座らせられて質問されていたけれど、ほんの数十分も経たないうちに彼は何処かに一人連れて行かれた。

 私はと言うと、彼が去ってからも職務質問らしき質問を浴びせられた。
 お前は、何であそこ(デパートの階段の踊り場)にいたんだ!とか、親は誰だの学校は何処だのと遠々に・・・。私もなんとか自分が知りえる事を正直に、そして素直に話しているんだが、生い立ちや家庭環境が複雑すぎて、今の親でさえ、いったい実の親なのか?育ての親なのか?さえ・・・。

 それに、大沼学院を卒業する際に、社会に出たら、卒業した中学校は?と聞かれたら、間違っても「大沼学院」だとは言わず、ちゃんと、卒業証書を貰える学校の名前を言いなさいと云われているからそうして答えると、「その学校は何処にあるんだ?クラスは?クラスに何人いた?」とか聞かれはじめたがそんな事は知る筈がない。

 実際に通ってもいない学校が何処にあるかも、クラスがどうだの、クラスに何人いたのだの分かるわけないべー!通っていないんだから!!

 そんな質問にも答える事が出来ない私に、警察官は更なる疑問を抱きはじめたのは無理もない。でも、その時は、「自分は本当に何もしていないんだから、家に帰して欲しい・・・」とだけ思っていたけれど、そうはいかない事は明らかだった。

 警察官が、「ちゃんと親の名前と電話番号を言えば帰してやるんだから、ちゃんと話しなさい」と言ってくれるんだけれど、ちゃんとオヤジの名前さえ知らなかった・・・。
 電話番号も、覚えていなかった・・・。

 何にも知らない、今の親の名前さえ知らない自分に、この時、もの凄く悔しさを覚えた。
 悔しかった〜・・・。正直に話そうにも、自分は何にも知らない・・・。
 親の名前と電話番号さえ知っていさえすれば、電話を掛けてくれて帰してくれた筈なのに、悔しかった・・・。

 私が彼の犯罪の仲間ではなかったことが証明されたのを、この時の警察官の質問の内容が変わった事で感じていた。でも、本当に知らない。そして、「親の名前と電話番号を言えば・・・」と言われて想った事は、「いずれにせよ、これでオヤジに知られて帰って行ったらまた殴られる・・・」と言う怖さがあったから、「これ以上の事は知らない!ココで帰れなくてもいい!どうせ迎えに来られても、『お前このやろう!このくそ忙しいのに、また何やらかしたんだー!と殴られる・・・』そう想うと・・・。
 この時、「もうどうにでもなれ・・・」と思いましたよ。本当に、「もう好きに、どうにでもしてくれ!」と・・・。

 皆さんにとっては想像が出来ない、納得のいかない馬鹿げた話に思われるかも知れません。ですが、こんな経験をしている子供や、昔は子供だった今は大人の方々は、決してそう少なくはないのではないでしょうか?

 こうして私は、彼、○○○はし君にどんな理由が有って私を誘い岩見沢まで汽車に乗って行ったのかも記憶に無く、岩見沢まで彼にくっ付いて行き、彼に言われるまま駅前のとあるデパートの3階や4階の階段の踊り場で彼が戻ってくるのを待っていたら補導されて駅前の交番に連れて行かれ、そのあげく絶対に話したくない事を暴露し、そして自分でさえ訳の分からない知らない複雑な家庭環境の事を話せと警察官は言う。

 正直に話しても、話している自分でさえ、話す自分のその内容に疑問を抱きながらも懸命に話そうとしているけれど話せない、そしてそれを聞く警察官は不信を抱き、更に問い詰めてくる。

 親の名前と電話番号を話せば親に迎えに来て貰って帰してやれると言われても、親のちゃんとした名前も電話番号も覚えてない。

 どんなに複雑な家庭であろうと、どんなアホな奴でも親の名前や電話番号くらいは覚えていない奴なんていないだろうに!と、その自分のアホさ加減にムカついて、悔しくて・・・。

 「もう〜どうでもなれ!」とヤケクソになり、その後は一口も話すこと無く無言を貫き通した。その後はどうなったかは次回の章にて掲載いたしますが、私はともかく、何の罪もない子供を親の勝手な都合で、社会の勝手で、まるで粗大ゴミみたいにアッチにやりコッチにやりと、してはいけないとは思いますが、絶対してはいけないとは申しません。それにはどの家庭にも事情と言うものがありますから・・・。

 絶対にとは申しませんが、ですが大人たちである私達が、今一度、その事をしっかりと自覚して、自分の子供はもちろんのこと、周りの子供たちにも、大人としての自覚と正しい良識を持って接して行かなければいけないのではないだろうか?と、自分の経験を通じて、本当にそう思います。

 この時と、そしてこの後の経験が、私にとって大きな大きな転換期であった事に間違いありませんが、しかしながら、私のような経験は一生しないで済んで幸せに人生をまっとうできるなら、それに越したことはありません。

 けして意地を張っている訳ではありませんが、自分にはこんな経験が在ったからこそ様々なモノの価値に気付かされました。ですから、やはり「感謝」しています。

 今回もまた、最後までお読み下さり、ありがとうございました。

荒町 真樹生

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